糖質科学とは、デンプンやセルロースなどの糖質と呼ばれる物質、単糖が配列した分子である糖鎖、そして糖鎖がタンパク質や脂質など他の分子と結合してできた複合糖質、これらを研究するサイエンス分野をいいます。
糖の研究の歴史は19世紀まで遡ります。当初は単糖やオリゴ糖の研究が行われ、しだいに複雑で大きな糖鎖の構造や機能を解明する複合糖質研究へと発展していきました。複雑な糖鎖の解明が進むことで、糖が単なるエネルギー源や細胞膜、軟骨、粘液を作る構造材料というだけでなく、生命機能の根幹につながる情報伝達機能を担っていることが明らかになってきたのです。
複合糖質は私たちのからだを構成する細胞の表面にたくさん飛びでています。私たちが人の顔をみて相手が誰かを見分けるように、からだの中の細胞同士は表面の糖鎖によって認識し合い、そして糖鎖を介して必要な情報のやりとりをしています。つまり、糖鎖はある細胞とほかの細胞を区別する目印として、またタンパク質の荷札の役割となり体内を動き回るときの目印になるなど情報伝達の機能を果たしているのです。
これらの糖鎖機能の研究は、これまでの遺伝子やタンパク質の研究だけでは見えてこなかった新しい生命の調節の仕組みの解明へとつながっています。
インフルエンザ治療薬として知られているタミフルやリレンザは、ウイルスがシアル酸という糖に結合する働きを利用して作られた薬です。インフルエンザにかかったとしても体内でのウイルスの増殖を抑えることで、重症化するのを防いでくれるのです。
糖鎖は私たちの細胞やたんぱく質の表面を衣服のように被って、外部との情報伝達の役割を担っています。つまり、細胞間の情報伝達の仕組みが解明できれば、それをつなぐことや遮ることで、感染症、がんの転移、免疫疾患の予防や治療のための薬が開発できると期待されています。
さらに、糖鎖の認識機構を利用した薬のターゲティング(DDS)や抗炎症薬の開発、臓器移植時に糖鎖遺伝子を改変することで拒絶反応を抑える技術など、成果が期待できる段階にあり注目されています。
今後、糖質科学分野と遺伝子研究やタンパク質研究との融合研究が進めば、iPS細胞などによる再生医療や抗体医薬、バイオマーカーなど糖鎖の機能を活用したさまざまな創薬・医療への期待はますます高まっていくでしょう。
「敗戦によって、資源のない日本は、石油などの原料を輸入しなければならなくなりました。そこで私は、これからは科学技術の振興を図って新しい製品を開発するような仕事、つまり、頭を使って無から有を生ずるような仕事をしたらいいのではないか、と考えるようになったのです。」
これは、当社の創業者水谷當稱の言葉です。この「無から有を」という発想から生化学工業がめざしたのが、この当時、あまり取り組んでいる例のなかった「複合糖質」の研究分野でした。複合糖質は、構造が複雑で精製・分離も難しく、つかみどころがなく取り扱いが難しい物質だと考えられていたのです。
しかし科学技術の振興と共に歩むという考えのもと「学問尊重」を実践し、生化学者との共同研究などを通じ、基礎研究を積み、製造技術を磨き、独自のノウハウを蓄積しました。
1950年には、グリコサミノグリカン(GAGs)の一種である「コンドロイチン硫酸」の世界初の工業化に成功しさまざまな医薬品に配合されました。そして試行錯誤のうえ「ヒアルロン酸」も、医療用医療品として開発・上市することに成功し、創業時より今日まで「糖質科学のパイオニア」として歩んできました。
生化学工業の研究開発が糖質科学分野で特に力を入れているのが、創業時よりノウハウを蓄積してきた糖鎖の一つであるGAGsです。近年、このGAGsを含め糖鎖が、さまざまな生命活動で重要な役割を果たしていることがわかってきました。ヒアルロン酸などのGAGsをそのまま医薬品に応用するだけではなく、GAGsの働きを活かし、解明することで見出される新たな物質の活用を目指しています。
生命とはなにか?というサイエンスにおける究極のテーマを探求することができるという幸せ、そして、その研究成果を世界中の人々に還元するという仕事が私たちの仕事です。製薬会社で働くという選択をしようとしているあなたにとってこれ以上の働き甲斐のある仕事は簡単には見つけられないと思います。
生化学工業は規模的には中堅の製薬会社ですが、当社のヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸の製品は全世界17カ国で販売されています。また新たな医薬品や医療機器の開発を国内外で実施しており、世界中に広がるグローバルな活躍の場と、チャレンジ魂があれば年齢に関係なく責任ある仕事が得られるチャンスがあります。
糖質科学のさまざまな可能性のもと、糖質科学をベースにしたスペシャリティーファーマを目指す生化学工業の未来を、あなた自身が創り出してくれることを期待しています。