6つのマテリアリティ

生化学工業では、社会の持続的な発展と企業価値向上に向けて、優先的に取り組むべき重要課題について、当社が考える重要度と多様なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から評価し、6つのマテリアリティを特定しました。これらのマテリアリティの取り組みを推進することを通じて、国連加盟国が採択した持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献していきます。

マテリアリティの特定プロセス

ステップ1 社会課題等の抽出と整理

マテリアリティを特定するにあたり、非財務情報開示のガイドラインや国際的な枠組み・原則・指針、ESG評価機関からの調査項目などを踏まえて、社会課題を抽出しました。さらに製薬業界特有の課題についても洗い出しを行い、39項目の社会課題リストとして取りまとめました。

 

ステップ2 社会課題の優先順位づけ

ステップ1で抽出した39項目の社会課題リストについて、当社の経営理念、経営戦略、財務面を含むリスク情報などから、当社が考える重要度を評価しました。
また、多様なステークホルダーを含む社会からの期待を評価するために、外部コンサルタントが各ステークホルダーの視点で点数付けを行い、分析・整理しました。これらの結果のもとに社会課題評価マトリックスを作成し、双方から見て最も優先順位の高い17項目に絞り込みました。

<社会課題評価マトリックス>

ステップ3 妥当性の確認と課題のグルーピングによるマテリアリティの特定

ステップ2で作成した社会課題評価マトリックスの妥当性を確認するため、社内関連部門や外部コンサルタントと協議・精査を行ったうえで、優先度の高い17項目の社会課題をグルーピングし、6つのマテリアリティを特定しました。特定したマテリアリティについて、それぞれの選定理由及び目指す姿や、目標、取り組み、モニタリング指標を設定するとともに、SDGsとの関連性を整理・確認し、取締役会で審議・承認しました。

 

マテリアリティと取り組み一覧

上記のプロセスを経て、当社では以下の6つのマテリアリティを特定しました。なお、マテリアリティにつきましては、社会課題の変化や当社の経営計画等に合わせ見直しを行う予定です。
各マテリアリティにはモニタリング指標を設定しており、マテリアリティの取り組みに対する進捗状況の検証と評価等を行っていきます。なお、今後、一定期間における活動推移を見極め、各項目について適切なKPIを検討・設定する予定です。

 

※数値は注記のない限り単体ベースとなります。
※マテリアリティは2021年12月開催の取締役会で承認したものです。

 

①真に有用な医薬品等の創製

選定理由及び目指す姿

糖質科学の知見を活かした医薬品等を創製し、世界の医療に貢献することは当社の持続的成長の根幹です。
当社は、新薬上市により得られる利益を研究開発に投資し、真に求められる医薬品等を継続して生み出すことで存在価値を高めるとともに、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献していきます。
また、知的財産を重要な経営資源のひとつと位置付け、医薬品等の継続的な創製に役立てるためにグローバルな知的財産戦略を推進します。

目標

  • 糖質科学に関する知見や独自の創薬技術を活用して、真に有用な医薬品等を継続的に創製する。

取り組み

  1. グローバル展開を視野に入れた複数の開発パイプラインを進展させる。
  2. GAGに関連する独自の基盤技術を強化・活用し、アンメットメディカルニーズ(十分に満たされていない医療ニーズ)に基づいた複数の新薬候補テーマを創出する。
  3. アカデミアの研究シーズや、外部技術との融合を図ることで、当社保有技術に付加価値を創出し、新薬開発のスピードアップを図る。
  4. 当社の競争力強化に資する知的財産の取得・維持、第三者の権利の侵害予防調査を推進する。

実績(2024年3月期)

  • SI-6603米国第Ⅲ相臨床試験、SI-449国内ピボタル試験において主要評価項目を達成
  • 米国FDAへSI-6603の承認申請を完了
  • アンメットメディカルニーズの高い疾患での新規研究テーマ創出を推進

モニタリング指標

  • 開発パイプラインのプロジェクト数と進捗状況
  • 共同研究、研究協業の件数 
  • 学会発表、論文投稿の件数
  • 特許の保有数(国内外)
  • 侵害予防調査の実施状況 

②品質を確保した医薬品等の安定供給

選定理由及び目指す姿

高品質な医薬品等を安定的に供給することは製薬企業の重要な責務です。

当社は、患者の皆さまや医療機関等に信頼される医薬品等を継続してご使用いただくために、信頼性保証体制・生産体制を強化していきます。

また、原材料の調達等に対するリスク管理とその予防措置にも万全を期していきます。

目標

  • グローバル基準に適合した品質マネジメントシステムを遵守し、品質を確保した医薬品等を製造して安定的に供給する。
  • 原材料の調達、製品供給に対するリスク管理を徹底し、継続した製品供給を担保する。

取り組み

  1. GMPコンプライアンス活動(GMP省令、製造販売承認事項の遵守)を継続的に実行する。
  2. 品質を確保した医薬品等を安定的に供給するために、クオリティカルチャー(品質文化)を醸成する。
  3. 原材料、製品の適正在庫管理と止まらない工場を目指した予防保全活動を充実させる。

実績(2024年3月期)

  • 外部委託製造業者、供給者並びに販売業者に対する監査22件(書面・実地)実施
  • 国内外当局からの定期監査を受審。重大な指摘なし。マイナーな指摘、指導事項に対応
  • 定期的なマネジメントレビューによりGMP適合性と品質文化醸成を確認
  • 品質文化醸成のため、工場単位での評価指標を導入
  • 在庫管理の高度化に向け、システム構築にあたっての課題を抽出

モニタリング指標

  • マネジメントレビューの実施状況 
  • 監査の実施・対応状況
  • 品質文化醸成に関する取り組み状況
  • 生産計画に基づいた在庫の確保状況
  • 品質確保・安定生産に向けたメンテナンスの実施状況 
  • 大規模災害発生時に備えたマニュアルの整備状況 

③医療アクセスの拡大と質の高い医療情報の適切な提供

選定理由及び目指す姿

アンメットメディカルニーズに対応した医薬品等をより広く多くの患者の皆さまに適正にご使用いただくことは、製薬企業としての使命です。
当社は、医療ニーズに対応した医薬品等をグローバルに展開することを推進するとともに、製造販売元として、医薬品等の安全性・有効性や当社製品に関わる疾患に対する適切な認知を得るために、情報提供の充実に努めていきます。

目標

  • 有効性と安全性の高い医薬品等をより多くの患者の方々にお届けする。
  • 医薬品等の安全性、有効性等に関する情報を適切に提供し、適正使用を推進する。

取り組み

  1. 販売提携先と協力し、既存製品の市場における認知度向上を図る。
  2. 既存製品・開発品の多国展開を加速する。
  3. 医療ニーズに合わせた製品改良等に取り組む。
  4. 育薬につながる医学・科学的価値の高い情報を提供する。
  5. 疾患啓発サイトの運営やメディアへの情報提供を充実させる。
  6. 製造販売後安全管理の基準を遵守し、安全管理情報を迅速かつ適正に収集・評価・提供する。

実績(2024年3月期)

  • 育薬につながるエビデンス創出として、論文公表3件、学会発表2件
  • 製品の育薬に関連した共同研究8件を実施し、新たなエビデンスを構築
  • 販売会社と協働しセミナーや説明会を開催、展示会へ参加(国内共催セミナー16回)
  • 医師への情報提供、一般向けの疾患啓発を目的に、メディア取材へ協力、ウェブ上で情報公開
  • 販売会社と協働した患者向けキャンペーンを展開

モニタリング指標

  • 製品の出荷本数(医薬品・医療機器)
  • 製品改良の取り組み状況
  • 製品価値向上のための情報提供の活動状況
  • 疾患啓発サイトのアクセス件数
  • メディアセミナー等の実施状況
  • 安全管理に関する教育の実施状況

④倫理的で公正な事業活動とコーポレート・ガバナンスの強化

選定理由及び目指す姿

コンプライアンスは企業活動の基盤をなすものです。さらに、製薬企業には、より高度な倫理観が求められており、業界のガイドライン等を遵守する必要があります。
当社は、社員一人ひとりが法令遵守のみならず、高い倫理感を持って行動する経営を推進していきます。
また、社会の信頼に応える経営を推進することは、企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上に不可欠なものです。
当社は、実効性の高いコーポレート・ガバナンス体制の整備に継続的に取り組みます。

目標

  • 当社の役職員一人ひとりがコンプライアンス・プログラムを遵守し、高いコンプライアンス意識のもと行動する。
  • 透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うために、最適なコーポレート・ガバナンス体制を整備する。

取り組み

  1. コンプライアンス行動規範等に関する教育を定期的に実施し、コンプライアンス意識を醸成する。
  2. 社内外に複数の相談・通報窓口を整備するとともに、発生した問題について適切に対応する。
  3. コーポレート・ガバナンスの運用状況について取締役会においてモニタリングをするとともに、体制の見直しを継続的に検討する。
  4. 社外役員への情報提供を充実するほか、取締役会実効性評価の結果を踏まえ改善活動を推進する。

実績(2024年3月期)

  • サステナビリティ関連方針の適用範囲を子会社に拡大
  • SKKグループコンプライアンス行動規範を一部改定(人権尊重に関する条項を拡充)
  • コンプライアンス関連規定を一部改定(重大事案における第三者委員会の設置条項を追加)
  • コンプライアンス意識の醸成のため、行動規範研修、テーマ研修、意識調査(アンケート)を実施
  • 人的資本経営に向けた当社取り組みについての社外役員会を開催

モニタリング指標

  • コンプライアンス教育の実施状況
  • 相談・通報窓口の利用状況 
  • 内部統制システムの運用状況
  • コーポレートガバナンス・コードの対応状況
  • 社外役員への情報提供の状況
  • 取締役会実効性評価の実施と改善活動の状況

重要評価指標と目標

  • コーポレートガバナンス・コードの適切な対応
  • 全取締役・監査役による取締役会実効性評価及び社外役員会での検証の実施
    年1回の評価及び検証

 

【2024年3月期実績】

  • 取締役会ほか会議体の適切な運営及び各種委員会における内部統制システムの維持
  • 3月にアンケート調査及び社外役員会で実効性評価、4月取締役会で報告

⑤多様な人材の活躍推進と育成

選定理由及び目指す姿

事業活動において有用かつ多様な人材の確保と育成、その活躍を推進する人材マネジメントは企業成長の礎となるものです。
当社では、人材を重要な企業資産のひとつであると捉え、新しい価値を創造できる人材の育成に取り組むとともに、多様な社員の活躍が当社の持続的な成長の原動力となるよう、全ての社員が能力を十分に発揮できる環境・制度・仕組みの整備を進めていきます。

目標

  • スキルアップやキャリア形成を積み、情熱と誇りを持って自ら業務にあたり成果を生み出す「自律型社員」を育成し、定着させる。

取り組み

  1. 社員のモチベーション向上に資する、人事諸制度の見直しや高年齢層社員の処遇改善を継続的に行う。
  2. 多様性を念頭に置いた計画的な採用活動を行うとともに、その多様性が事業活動に十分寄与するよう配属・育成を図る。
  3. 「自律型社員」を育成するため、体系的な教育カリキュラムを充実し、ジョブローテーションも考慮した計画的な教育研修を実施する。
  4. 働き方改革や、ワークライフバランスの向上施策を推進する。
  5. 社員の心身の健康を適切に管理・促進するため、メンタルヘルスケア施策や健康促進活動を充実する。

実績(2024年3月期)

  • 従業員エンゲージメントサーベイを実施
  • 成長機会、雇用の多様性等の人的資本に関するデータを各種開示物に掲載
  • 研修カリキュラムの継続見直し及び研修受講状況の所属長へのフィードバックを強化
  • 工場での増産と基盤強化を支えるための勤務制度と処遇を導入し、採用を強化
  • 社員の健康促進活動として、ストレスチェックの結果等を踏まえ、社内セミナーを決定

モニタリング指標

  • 人事諸制度等の改訂状況
  • 女性の採用比率/在職比率/管理職比率
  • キャリア採用社員の採用比率/在職比率/管理職比率
  • 障がい者雇用比率
  • 離職率(自己都合)
  • 新卒新入社員の入社3年目までの在職比率
  • 人材育成のための教育・研修の実施状況
  • 働き方改革や、ワークライフバランスの向上施策の取り組み状況
  • 平均有給休暇取得日数
  • 平均時間外労働時間/月
  • 育児・介護休業取得人数(男・女/契約社員含む)
  • 育休後復職比率
  • メンタルヘルスケア施策等の実施状況

重要評価指標と目標

  1. 女性社員採用比率    ►毎年50%を目安
  2. 女性社員管理職比率   ►2026年3月末までに25%以上を目指す
  3. キャリア社員採用比率  ►毎年50%を目安
  4. キャリア研修の開催件数 ►年間15件以上

 

【2024年3月期実績】

  1. 女性社員採用比率:25.4%
  2. 女性社員管理職比率:17.4%
  3. キャリア社員採用比率:67.8%
  4. キャリア研修の開催件数:22件

⑥環境に配慮した企業活動の推進

選定理由及び目指す姿

地球温暖化をはじめとする環境問題による影響が顕在化しており、環境対策・生物多様性の保全は喫緊の社会課題となっています。これらへの対応は、リスクの減少のみならず企業の収益機会にも関連する経営課題でもあります。
当社は、社会の一員として、環境対策と事業成長を両立させることを目指し、環境関連法令等を遵守することはもとより、環境負荷の少ない事業活動への取り組みを推進していきます。

目標

  • 事業活動における環境負荷低減、気候変動、生物多様性保全への対策を推進し、持続可能な社会の実現に貢献する。

取り組み

  1. エネルギー使用量削減に向けた効果的な施策を推進する。
  2. CO_{2}排出量削減につながるエネルギーへの転換に取り組む。
  3. 製造用水の調製や、排水処理に環境負荷の少ない設備を導入するなど、水質汚濁負荷を軽減する。
  4. 製品の脱動物由来化を含む生物多様性保全活動を推進する。

実績(2024年3月期)

  • エネルギー使用量の継続的削減(エネルギー使用にかかる原単位の5年間平均97.5%:省エネ評価Sクラス相当)
  • 二酸化炭素排出量削減を達成(前年比6.0%減)
  • 国内4事業所で二酸化炭素フリー電力を調達し、電力の非化石転換を達成
  • 海外子会社でのカブトガニの放流・保護活動を継続

 

※省エネ評価

省エネの結果に応じてS(優良事業者)・A(一般事業者)・B(停滞事業者)へのクラス分けを行うもの。Sクラス(5年間平均原単位1%以上削減)の事業者は、優良事業者として経済産業省のホームページで公表される。

モニタリング指標

  • エネルギー使用量(原油換算値)
  • CO_{2}排出量
  • 再生エネルギー活用の取り組み状況
  • 水質汚濁負荷(COD)状況
  • 製品の脱動物由来化への取り組み状況 
  • 生物多様性保全活動の実施状況 

重要評価指標と目標

  • CO_{2}排出量
    ►2030年までに46%削減(Scope1&2、2017年度比)
    ►2050年までにカーボンニュートラルを目指す
    ►Scope3の算定(2025年までに数値を公開)

 

【2024年3月期実績】

  • Scope1&2:21,368t(2017年度比18%削減、マーケット基準)
  • Scope3    :68,393t(簡易な算定方法による概算)