コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸 (GlcA) と N-アセチル-D-ガラクトサミン (GalNAc) の2種類の糖が交互に反復する糖鎖に硫酸基が結合した構造を持つ、ムコ多糖の一種です。
1.コンドロイチン硫酸A、B、C
1951年にコンドロイチン硫酸A、B、Cのそれぞれに分類され、その存在が報告されています(のちにコンドロイチン硫酸D、Eなども報
告)。コンドロイチン硫酸Aは、GalNAcの4位の水酸基に硫酸基が結合した構造を有することから、系統名はコンドロイチン4硫酸と名
付けられました。一方のコンドロイチン硫酸Cは、GalNAcの6位の水酸基に硫酸基が結合した構造を有することから、系統名はコンド
ロイチン6硫酸と名付けられました。その後の構造解析技術の発展により、コンドロイチン硫酸Aとコンドロイチン硫酸Cのどちらにも
4位および6位水酸基への硫酸基の結合が確認されたことから、当初の系統名のコンドロイチン4硫酸、6硫酸と、化学構造そのものを
表す4位硫酸、6位硫酸は区別して表現する必要がでてきました。すなわち、コンドロイチン硫酸Aは4位硫酸の比率が高いタイプ、
コンドロイチン硫酸Cは6位硫酸の比率が高いタイプ、と説明できます。
2.哺乳類のコンドロイチン硫酸
以前弊社が測定した牛軟骨由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムの硫酸基の比率を確認したことがありますが、4位硫酸が約50%、6
位硫酸が約40%であり(残りはその他の構造)、コンドロイチン硫酸Aに分類されることが分かりました。一般に哺乳類の軟骨のコンド
ロイチン硫酸はAに分類され、動物種によって4位硫酸の比率が異なると言われています。 牛軟骨よりもブタ軟骨に含まれるコンドロ
イチン硫酸Aは4位硫酸の比率が高いといった興味深い報告がいくつかあります。
3.魚類のコンドロイチン硫酸
一方、軟骨魚類に分類されるサメの軟骨には、コンドロイチン硫酸Cに分類されます。弊社が販売するサメ軟骨由来コンドロイチン硫
酸ナトリウムND-Kグレードは、4位硫酸が約15%であるのに対し、6位硫酸が約70%という分析結果が得られました。同じ魚類でも硬
骨魚類では哺乳類に近いコンドロイチン硫酸を持つものもいるようで、一概に哺乳類はコンドロイチン硫酸A、魚類はコンドロイチン
硫酸C、と断定できないようです。
4.コンドロイチン硫酸B
コンドロイチン硫酸Bは、コンドロイチン硫酸Aの GlcA の5位がエピメリ化してイズロン酸(IdoA)の構造となっています。主に哺乳類
の皮膚に存在することから、デルマタン硫酸とも呼ばれます。
5.コンドロイチン硫酸ナトリウムの用途
従来コンドロイチン硫酸ナトリウムは、注射剤、点眼薬等の有効成分として使用されてきました。また添加剤としては、金属イオンの
イオン価の安定性を目的に使用されています(2価鉄イオンのイオン価を安定させる効果にもとづき、各種微量ミネラル製剤への使用実
績があります)。近年では、たんぱく質などの変性しやすい分子の安定化、薬効成分の徐放性コントロール、DDSとしての使用のほか
再生医療分野では細胞培養における培地成分としての使用(細胞の安定性、増殖力向上)、培養細胞の組織への定着性向上等の検討
使用されており、今後さらに新しい用途の開発が期待されます。
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