生化学工業は、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献するために、独創的な新薬の研究開発に取り組んでいます。

研究開発本部長メッセージ

取締役 上席執行役員 研究開発本部長<br/>             船越 洋祐
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取締役 上席執行役員 研究開発本部長
             船越 洋祐

生化学工業は、長年にわたり蓄積してきた糖質科学関連の技術やノウハウを用いて、アンメットメディカルニーズに応える、独創的で革新的な医薬品・医療機器を創出し、世界の患者の方々に提供し続けることを社会的使命と考えています。
2019年2月には、アルツの次世代品として開発を進めている変形性関節症治療剤SI-613の日本における3つの第Ⅲ相臨床試験のうち、メインの試験である膝関節を対象とした検証的試験において主要評価項目を達成することができました。残る2つの試験結果を考慮のうえ、2020年前半の承認申請を目指します。
また、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603については、米国において追加の第Ⅲ相臨床試験を進めています。本試験では、成功確度を高めるために、前回試験の知見を踏まえた厳格な基準を設定しており、進捗は計画より遅れていますが、被験者の方々の組み入れを促進すべく、各種施策に注力してまいります。
社員一人ひとりがサイエンスをしっかり考え、成果を生み出していく「科学者としてのプロフェッショナル集団」となることを目指し、今後も開発パイプラインの着実なステップアップを進めるとともに、グローバル展開が期待できる新薬候補の創製に尽力してまいります。

研究開発の基本方針

生化学工業は、新製品を速やかかつ継続的に創出するために、研究開発の対象物質や重点疾患を絞り込んだ効率的な研究開発活動を推進しています。

 

創薬の対象とするのは、当社が長年携わってきた複合糖質の構成成分のひとつであるグリコサミノグリカン(Glycosaminoglycan 以下、GAG)です。当社は70年近くにわたり、GAGの創薬研究及び生産・製剤化技術に関する多くの経験やノウハウを蓄積してきました。現在、ヒアルロン酸等のGAGそのものを医薬品として応用するだけでなく、架橋技術などを用いてGAGを修飾した物質や、酵素等GAGに働きかける物質等も対象としています。

 

また重点疾患領域としては、関節機能改善剤アルツや眼科手術補助材オペガン等の開発を通じて知見を有する運動器疾患領域、眼科疾患領域などに注力しています。

 

生化学工業と糖質科学の関わり

当社は経営信条に「学問尊重の理念のもとに、糖質科学を基盤として有用で安全な製品を創造し、広く世界に供給して人類の福祉に貢献する。」を掲げており、糖質科学を経営基盤の中心として位置づけるとともに、学問尊重の姿勢を貫いています。これには、当社の成り立ちが深く関わっています。

 

1950年に当社は世界で初めて、GAGの一種であるコンドロイチン硫酸の工業化に成功しました。これが糖質科学を中心とした現在のビジネスの基盤となっています。このコンドロイチン硫酸の製造を皮切りに、医薬品原体や試薬・診断薬へも事業を拡大するなかで、糖質科学関連のアカデミアや研究機関との繋がりを深めてきました。

 

このようなアカデミア等との密接な関係のなかで得られたのが、GAGの一種であるヒアルロン酸を医薬品に応用するというアイデアでした。その後、長きに渡る研究開発を経て、ヒアルロン酸を主成分とする世界初の関節機能改善剤アルツの開発に成功しました。また、GAGを分解する酵素であるコンドリアーゼを用いた腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコアの開発も、アカデミアとの協調に端を発するものです。

 

当社は今後も糖質科学に軸足を置き、大学や研究機関などとの連携を推進しながら、糖質科学領域における研究成果をもとに医薬品・医療機器を創出して、世界の患者の方々に提供できるよう努めていきます。

複合糖質を医薬品へ応用することの難しさ

GAGは、アミノ糖(窒素原子を含む糖)と、ウロン酸と称される酸性の糖(もしくはガラクトース)とが、鎖のようにつながったもの(糖鎖)であり、複合糖質の構成成分として生体のなかに存在する物質です。糖鎖は、生命科学において核酸・タンパク質と並ぶ第3の生命鎖とも呼ばれていますが、その化学構造は複雑であり、構造解析や自動合成、大量合成が難しいなど、研究においては特有の困難さを持ち合わせています。

 

一方で、糖質科学に焦点を当てた産学官の研究プロジェクトが過去に実施されて以来、糖鎖の構造解析技術や合成技術が向上しました。また、糖鎖の合成酵素や分解酵素の遺伝子も網羅的に同定され、糖鎖の生体内における機能解明が進んでいます。


このような糖質科学技術の進歩は、当社の創薬研究とも密接に結びついています。

研究開発の方向性と今後の創薬展開

当社は長年にわたる研究の蓄積として、GAGの化合物ライブラリーやGAG関連酵素群、また、それらを扱うための多岐にわたる技術を有しており、創薬活動に積極的に活かしています。また、糖質科学研究者と世界的なネットワークを構築し、大学や研究機関との複数の共同研究を進めています。

 

具体的には、運動器疾患(整形外科)、眼科疾患を対象とした創薬に重点的に取り組むとともに、GAGに関する技術を活かした新領域への挑戦も始めています。また、既存製品や開発中のテーマについて、製品価値向上に向けた検討(適応症の拡大や剤形の追加、用法・用量の変更等)も推進しています。

 

これまでに当社では、主にGAGの修飾・加工などによりその生理活性を高める創薬アプローチを実施しており、これに加え、現在では、GAGを活用したドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System 以下、DDS)への応用にも取り組んでいます。さらに今後は糖鎖の有する生物学的機能に着目したアプローチも取り入れ、創薬の可能性を高めていきます。

 

DDSについては、修飾GAGの特性を活用して、薬物の量や放出する部位・期間を狙いどおりにコントロールする技術の研究を進めています。当社の保有するDDS技術に、低分子化合物のみならず、ペプチドや核酸などの中分子やタンパク質などの高分子といった、他社が保有する技術・薬剤を組み合わせることで、幅広いアンメットメディカルニーズに対応できる創薬を目指していきます。

ライセンシング活動(製品パイプラインの早期拡充)

自社開発のスピードアップを図る一方で、製品パイプラインの早期拡充のために、外部の研究機関やバイオベンチャー企業・製薬会社などからの開発テーマの導入(インライセンス)にも積極的に取り組んでいます。重点疾患である運動器疾患をはじめ、医療ニーズの高い疾患・治療法をターゲットとし、他の開発テーマの進捗状況とのバランスを計りながら導入検討を進めるとともに、内外のネットワークの強化や組織体制の整備に努めています。

新薬開発への投資

生化学工業は、大手製薬メーカーと比較すると規模は大きくないものの、医薬品等の販売を他社に委ねることにより、多くの経営資源を新薬開発に集中的に投入しています。これは、売上高の25~30%を研究開発費に充てることを基本方針としていることや、全従業員の約3分の1が研究開発要員であることにも表れています。(生化学工業単体では従業員の約45%が研究開発要員です。)今後も研究開発型製薬企業として、研究開発を重視する姿勢を貫いていきます。

研究開発費(連結)の推移

研究開発要員(連結)の推移