生物が利用する事のできるエネルギー源は、糖・脂肪・蛋白質ですが、細胞の代謝の化学反応を進ませるための化学的なエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)です。ATPの介在によって、細胞内では、いろいろな化学物質が合成・分解されて、この代謝産物を細胞が利用しています。
B型肝炎の病原体で、体液や血液を介して感染を広げます。B型肝炎ウイルスの宿主は肝細胞で、ウイルス自体は肝細胞を破壊しません。しかし、異物の侵入を察知した免疫系はウイルスが感染した肝細胞を攻撃し、その結果、炎症が引き起こされます。
DNAの二重らせんモデルは、ワトソンとクリックにより、世界で最も権威のある自然科学誌の1つである『nature』に1953年に発表されました。これ以降、DNAを操作・解析する技術の進歩とあいまって分子遺伝学が急速に進み、ヒトゲノムプロジェクトが可能となる下地が作られます。
アンチトロンビンIIIは、トロンビンの活性を阻害する働きがあり、肝臓や血管内皮細胞で産生されています。トロンビンは、セリンプロテアーゼ(タンパク質分解酵素の一種)の仲間で、血栓生成時に重要な役割を果たします。ヘパリンは、アンチトロンビンIIIと結合し、この抗トロンビン活性を約1000倍にも高めると考えられています。
ある生物から取り出した特定の遺伝子に様々な改変を加え、それを大腸菌、酵母、培養細胞などで発現させることによって、その機能を調べたり、応用先を探ったりする学問を指します。遺伝子工学は、遺伝子を切断したり、つなげたりする酵素群の発見、特定遺伝子の導入・増殖に用いられる様々なベクターの発見、塩基配列決定法の進歩・自動化の進展などにより、飛躍的に発展しました。
血糖値を下げる働きがあるホルモンで、すい臓のランゲルハンス島から分泌されます。1921年にバンティングとベストにより発見され、1956年にはサンガーにより化学構造がすべて明らかにされました。
グルコースが約2万程度結合した物質で、分子量は数百万です。複数のグルコースが結合したもの、という意味ではデンプンと共通していますが、デンプンは分子量がせいぜい数千~数十万(グルコース20~2000個に相当)で、枝分かれはグリコーゲンよりも少ないという特徴があります。デンプンは植物の(栄養)貯蔵多糖として、グリコーゲンは動物の貯蔵多糖として知られています。
血液中に含まれるグルコースの濃度です。食間、絶食時で70~100mg/100ml、食後で150~160mg/100mlが正常値とされています。 なお、血糖値が60mg/100ml以下になると脳の働きに支障をきたし、170mg/100ml以上になると尿中にグルコースが出ると考えられています。
生殖細胞が持っている遺伝子の全体をゲノムと呼びます。DNAの二重らせんモデルが発表されるはるか以前の1920年には、1組の染色体を指し示す表現としてゲノムを用いることが提唱されています。
再生医療とは、病気や事故などで失われた組織、器官を、細胞培養や生理活性物質の投与などの手法により再生する治療法です。
細胞が分泌している物質の総称で、一般的には動物の細胞以外の組織を指します。骨、軟骨、腱、皮膚の真皮が代表的な細胞外マトリックスで、その主成分はコラーゲンのような繊維性タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカンです。
従来、細胞外マトリックスの最大の目的は細胞や体の支持と考えられていました。しかし、生体とは異なる環境下で細胞を培養すると、細胞の性質が変化してしまうことがわかり、細胞との連携作用にも注目を集めるようになっています。
魚類、両生類、爬虫類、鳥類、ほ乳類を含む動物の総称です。これらの動物は、体を支えるために中軸となる骨格を持っています。脊椎動物という呼称は、これを脊椎と呼ぶことに由来します。
⇒無脊椎動物
繊維芽細胞、副腎細胞、軟骨細胞などの増殖調節、血管新生、創傷治療などの働きがあります。FGFに属する成長因子は現時点で十数種発見されており、FGF-2もその一種です。
糖質を加水分解し、これ以上ほかの糖に分解できなくなった単位を単糖と呼び、単糖が2~6個結合したものをオリゴ糖、7個以上結合したものを多糖と呼びます。例えば、単糖の代表はグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースで、オリゴ糖の代表はこのあと本文で出てくる砂糖(ブドウ糖と果糖の化合物)と乳糖(ブドウ糖とガラクトースの化合物)です。デンプン、キチン、セルロースは多糖に分類されます。
タンパク質に糖が結合した物質の総称で、動植物から微生物まで生物界に幅広く存在します。タンパク質は、DNAに記述された「設計図」をもとにして合成されますが(「翻訳」と言います)、動物細胞ではそのうち約半数は翻訳後に糖鎖が付加されると考えられています。タンパク質の機能を高度化したり、多様化させるうえで、糖鎖の付加は重要な役割を果たしているのです。
糖を付加する機能を持ち、最終的に複合糖質を作り上げるうえで必須の酵素です。
ノイラミニダーゼは、A型/B型インフルエンザウイルスの増殖に必須の酵素で、その活性を阻害することにより抗ウイルス作用を示す薬剤は、ノイラミニターゼ阻害剤と呼ばれています。ノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスの膜表面に存在し、ウイルスが感染細胞から「離脱」する際に重要な役割を果たします。ノイラミニターゼ阻害剤はノイラミニターゼの活性を抑え、ウイルスが感染細胞から「離脱」できないようにするわけで、そのため、インフルエンザウイルスが十分に増殖していない感染初期に、特に有効とされています。 代表的なノイラミニターゼ阻害剤には、タミフル、リレンザがあります。
「生物情報科学」「生命情報学」などと訳され、文字通り、生命科学と情報科学の融合を意味します。タンパク質のアミノ酸配列やDNAの塩基配列などの生命情報を解明し、医薬・農薬の開発をはじめ、さまざまな研究開発に役立てるコンピューター技術をいいます。
第1回のコラムで説明したようにグリコサミノグリカンの代表例で、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸の2糖が反復する直鎖状の構造をしています。生体内では通常、分子量数百万の高分子として存在し、動物種による構造の違いは確認されていません。
タンパク質に、2糖の単純な繰り返し構造からなる巨大な糖鎖(グリコサミノグリカンあるいはムコ多糖)が結合した物質の総称で、必ず硫酸の成分を含んでいます。糖とタンパク質が結合した物質という点では糖タンパク質と共通していますが、上述したような巨大糖鎖がタンパク質に結合しているという点で、糖タンパク質と区別されます。
代表的なプロテオグリカンには、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸などがあります。
構造がある物質に類似した物質群は、一般的に、その物質に対する類縁体(あるいは類縁化合物)と呼ばれ、例えば、プロテオグリカン類縁体であれば、プロテオグリカンに構造が類似した物質群を指します。カニやエビの殻に含まれるキチン、キトサンは、プロテオグリカンを構成するムコ多糖の一種であるため、プロテオグリカン類縁体に分類されます。
糖が複数結合し、鎖状になったものを糖鎖と呼びます(ただし、直鎖の場合もあれば、枝分かれしている場合もあります)。そして、複合糖質とは、この糖鎖に、糖以外の高分子物質が結合した物質の総称で、糖と脂質が結合した糖脂質、糖とタンパク質が結合した糖タンパク質、プロテオグリカンの3つに分類できます。
プロテオグリカンは、糖とタンパク質が結合した物質であるという点で糖タンパク質と共通しています。しかし、プロテオグリカンは、2糖の単純な繰り返し構造からなる巨大な糖鎖(グリコサミノグリカン)がタンパク質に結合しており、必ず硫酸の成分を含むなどの点で異なることから、糖タンパク質とは区別されます。
コンドロイチン硫酸のようにプロテオグリカンに含まれる糖鎖、グルクロン酸あるいはイズロン酸とN-アセチルグルコサミンとの2糖が反復する糖鎖に、硫酸が結合した構造をしています。
ヘパラン硫酸はヘパラン硫酸プロテオグリカン(パールカン、シンデカン、グリピカン、アグリン)として、基底膜や細胞表面に存在するグリコサミノグリカンのひとつとして知られています。ヘパリンは、硫酸化の度合いが高く、抗血液凝固作用をもっているものの割合が高い、などの点で、ヘパラン硫酸と異なります。ただし、ヘパリンは肥満細胞のみで合成されていることが知られているため、細胞増殖の調整で主役を務めているのは、動物の細胞、組織に広く分布しているヘパラン硫酸だと考えられています。
ピロリ菌とも呼ばれ、1983年に発見されました。直りにくい潰瘍患者、あるいは何度も再発を繰り返す潰瘍患者からピロリ菌を除菌したところ高い確率で治癒したことから、現在では、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因の1つと広く認められています。また、保菌者は胃がんになる可能性が高くなると報告されています。
ヘルペスという名称は、水ほう様の皮膚の炎症をヘルペスと呼んだことに由来し、自然界には100種類以上の仲間が発見されています。ヒトに感染するヘルペスウイルスは現在8種類あることが知られており、水ぼうそうの原因となるウイルスもその仲間です。
複数のアミノ酸が結合した化合物を一般的にペプチドといいますが、そのうち、構成アミノ酸数が10程度いじょうになるものをポリペプチドといいます。
脊椎を持たない動物の総称です。脊椎動物以外のすべてを指します。
⇒脊椎動物
1つの抗体産生細胞からは1種類の抗体しか産生されないという性質を利用して作られた抗体で、バイオテクノロジーによって作り出された均一の分子からなる抗体のことをいいます
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